第25回日本臨床モニター学会を開催するにあたりご挨拶申し上げます。
第1回の本学会が故奥秋晟福島県立医科大学名誉教授のもとに開催されて以来、四半世紀を経ました。当時、奥秋麻酔科学教室の門下であった私は当時を振り返りますと、「日本における臨床モニターに関する学術集会を創設しよう。診療科を跨いで多くの科の先生方が、モニターに関する研究発表、意見交換ができる場としよう。」と抱負を語られていたことを思い出します。開設当時、麻酔科、内科、産婦人科、小児科、救急、集中治療の先生方に加え、工学系の先生方、企業の開発の先生方、等々が参集されて、モニタリングの意義を考え、将来への抱負を熱く語られていました。丁度、日本に動脈血酸素飽和度モニター、自動血圧連続モニターなどが導入、開発された時期で、その後の日本の診療レベルが格段に向上したことはご承知の通りです。今回は、故奥秋晟先生を思い出しつつ、かつての先生方の情熱と知恵をたずねて、将来のモニタリングを考える場にしたい。そのような意味で、テーマを「温故知新」とさせていただきました。
近年、諸外国における学会等の展示会場を尋ねると、見たこともない、聞いたこともない、真新しいものを見かけることが多くなりました。以前、世界にあって日本にないものはなかったのに、今は、世界にあって日本にないものだらけです。時に、日本製の医療機器ですら、海外で市販されているにもかかわらず日本では未承認というものも少なくないようです。相対的に、現代の日本人の元気が少なくなったことも関与しているのでしょうか。
一方、昨年の第24回の本学会で公文会長が、日本看護協会会長の坂本すが氏をお招きし、ご講演を賜りました。そこで、坂本会長は「看護師の臨床モニターに関して教育する場がないこと、新しい機器が入っても継続して学ぶ場がないこと。」を指摘され、本学会と合同でできるようにとの声を挙げました。次期会長だった私は「目からうろこ」でした。昨今、「チーム医療」がテーマとして掲げられることが多く、医師、歯科医師、看護師、薬剤師、理学療法士、臨床工学士、さらには救急救命士等々が仕事の現場でモニターの機器を使用して臨床に従事しています。まさにチーム医療を全うするための楔(くさび)、連携の繋ぎ(つなぎ)となるモニターの啓発、教育は極めて重要と考えました。
今回は、「循環のモニター:過去から未来へ」を麻酔学会理事長の外須美夫教授、「女性医師とモニタリング」を日本女医会会長の津田喬子先生、「術後上気道閉塞のモニター」を気道管理第一人者の磯野史郎教授、そして日本のPMDAで活躍され現在、山形大学の医薬品医療機器評価学講座の松田勉教授にそれぞれご講演を賜ります。また、臨床モニターと医療安全と題して、坂本すが会長から基調講演を賜り、シンポジウムを企画しました。さらに、最新の呼吸モニターElectrical Impedance Tomography (EIT)、最新の脳機能モニター、歯科医師のためのモニタリング講座に関するシンポジウムを行います。ベットサイドでの経時的な測定「point-of-care」もモニタリングと受け止め、最新の知見を賜ります。3年前の東北東日本大震災での福島第一原子力発電所の事故は世界に危機感と危惧を与えました。「福島原発事故と健康管理モニタリング事業」を長崎大学 山下俊一教授にお話頂きます。そして、多職種の医療従事者にとって基本的、応用的なモニターに関する知識を吸収するために、モニタリングアドバンストコース、教育セミナー、臨床で必須の統計学セミナーを企画しました。また、教育的視点からも極めて有益なセミナーとなる日本光電の「バイタルサインセミナー」も同時開催します。最後に、7つのランチョンセミナーの講師は全て会長が自ら決めさせていただきました。企業の方々の利するところ以上に参加者の利するところを重視させていただきました。関係企業の方々にも御礼申し上げます。
学会準備にあたり関係各位の方々には大変お世話になりました。本会が、皆様にとって実のある充実した会合となることを確信しております。山形の春を満喫しつつ、学会を楽しんでいただければ幸甚に存じます。道中、気をつけておこしください。